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何て読むの?森の中の美味しいパン屋さん

ライター:檜原村地域おこし協力隊(土井智子)

檜原村の玄関口にあるお店の看板は、何と読むのか、初めて村を訪れる人は気になっているかもしれない。そのお店は、村人からも観光に訪れる人からも長く愛されているパン屋さん。「森の風゜」と書いて「もりのぷう」と読ませる、とてもユーモアあふれるネーミングセンスの持ち主は、毎日早朝から愛情たっぷりの美味しいパンを作る「森の風゜」の店主、浜中多夫(かずお)さんと奥様の百合子さんだ。

パン作りとの思わぬ出会い

店内に入ると焼きたてのパンが数十種類並び、パンが焼ける良い香りが立ち込めていて、嗅ぐだけで急におなかがすいてくる。店の奥では休む間もなく機械が動いていて、店主の多夫さんはパン作りに、そして奥さんはひっきりなしに買いに来るお客さんの対応に。パン屋の午前中は忙しい。

土井(以下、土)「次から次にお客さんが買いに来ますね。」

多夫(以下、多)「村外からもわざわざ買いに来てくれるんだよ。」

土「いろいろな所から買いに来るんですね!ところでご主人はもともとパン屋さんをやりたいと思っていたんですか?」

多「もともとは学校を卒業してスーパーに就職して、そこで配属になったのがパン部門だったんだよ。」

土「そうだったんですね!そこでパン作りと出会ったんですね。」

多「そう。パン屋は朝が早いけど、もともと朝早く起きる生活には慣れていたからね。」

多夫さんは生まれ育った檜原村を10代で出て、新聞配達をしながら学校に通っていた。早朝に起床し、新聞配達をした後、眠い目をこすりながら学校に通い、また次の朝には新聞配達。その生活を長く続けていたので、パン屋としての生活リズムがすでに出来上がっていたのだ。
スーパーでパン屋として務め、25歳の時に村へ戻り、そこから五日市(あきる野市)にあった菓子・パン製造販売のお店で、また9年間パン作りをしたという。

土「お店を自分でやろうと思ったきっかけがあったんですか?」

多「働いていたところが店をたたむという話になった時で、ちょうど村でも、お土産になるような品があればという話もあって。じゃあお店やってみようとなったんだよ。」

平成5年から始めたお店は、観光客はもちろん村の人にも愛され、今年で29年目。長くお店が愛されるのはもちろん、続けていくというのは大変なことだ。手伝いに来てくれるスタッフ、そして、いつもそばで支えてくれる奥様、百合子さんの存在は大きい。

村に風をおこしたいという思い

結婚して30年になる奥様、百合子さんとの出会いは、ボランティアイベントだったそう。多夫さんは村を盛り上げるようなイベントをしていたメンバーだった。百合子さんは世田谷のご出身で、現役助産師。現在も産後の母親のケアや指導などで、市町村から委託を受け訪問していて、遠くは神津島村まで行くという。明るくテキパキとこなす姿は、助産師さんと聞いてうなずける。自分の仕事を持ちながらパン屋を支える百合子さん。そんなお2人に、ずっと気になっていたことを聞いてみた。

土「お店の名前ですが、読み方もそうですし、気になる方が多いと思うんです。どうやってこの名前が生まれたんですか?」

百合子(以下、百)「初めて来たお客さんには『なんて読むんですか?』って聞かれるよね(笑)。当時、村に風をおこしたいという思いが2人にあって、森に風、森の・・・と考えていたときに、主人がなぜか『ぷうーっと』って言ったんです(笑)。」

土「なんで多夫さんは、ぷうーって言ったんですか?」

多「私は、ただ、パン生地がぷぅっと膨らむって言ったんだよね。」

百「その『ぷう』というのを聞いて、ひらめいて、風という漢字に丸をつけたらいいんじゃないかってなったの。」

土「面白いですね!すごいタイミングでぷうが出ましたね(笑)。」

地域のことを考えている人

村を訪れる人と村人との交流を深める場として、檜原村地域交流センターでは「森の学校」という講座を開いているが、そこで多夫さんはパン作りを教えている。また檜原村は高齢者や買い物困難な方の買い物支援をしているが、その事業者としても活動しており、地域の人にも頼られている。その他、檜原村観光協会の副会長、五日市防犯協会など、様々な場面で地域のために活動している。「高齢者が多い村だから、自治会など地域ごとに見守っていかないとね」と地域のことを考えている多夫さん。
「添加物のような余計なものを入れずシンプルに、そして柚子や舞茸など檜原村の地のものを使って美味しく作る」という思いで作るパン屋さんから、今日も美味しそうな香りが風に乗ってやって来る。

森の風゜(もりのぷう)
定休日:水・木曜日
紹介サイト (檜原村観光協会ホームページ内)
https://hinohara-kankou.jp/spot/morinopooh/

 

ライター:檜原村地域おこし協力隊・土井智子 2019年に千葉より檜原村に夫婦で移住し、地域おこし協力隊として村内で活動している。 自然豊かな檜原村で古民家暮らしを満喫し、日々の暮らしを発信中。 https://www.instagram.com/tocoxxhinohara/

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