檜原村で、人間の死後の善悪を裁くあの有名な裁判官、閻魔(えんま)様にお参りできることをご存知ですか?
閻魔様が祀られているのは、本宿にある吉祥寺というお寺の観音堂(普門観)です。
こちらには十王が祀られています。
この十王というのは文字通り十人の王のことですが、吉祥寺の裏の檜原城址がある城山で十三体の仏像にお参りできる、十三仏巡りに関係しています。
人が亡くなった際に行う三十三回忌までの十三回の法要、つまり十三回の忌日では、冥途へ行った亡者のこの世で行った業が十三の判者(十三王)によって裁かれるとされています。
もともとは中国から十人の王に裁かれるという「十王思想」が伝わった後、日本において十王に三人の王が加わった十三王の信仰へと発展しました。
十三仏とは十三回の法要の本尊として選ばれたものですが、十三王と結合されるようになり、民間信仰として始まり、広まっていきました。
今回は十三の仏様をご紹介しますので、ご興味があればぜひ閻魔様や他の王様、仏様をお参りに十三仏巡りをしてみてください。
城山は軽い登山ですので、しっかり準備をして、おいでください。(滑りにくくしっかりしたものであればスニーカーでも十分です。)
まずは吉祥寺の本堂へお参りです。何事も、まずは挨拶から。
六地蔵様の左脇の手すりのある道を進んでいきます。六地蔵様にもしっかり手を合わせましょう。
お墓のほうへ歩いて山を登っていくと、十三仏巡りが始まります。
1番目の仏様は不動明王。
忌日は初七日、対応する王は秦広王。目くじらをたてて睨みつけている恐ろしい形相。火炎に包まれ、盤石という岩の上に座っている。この世の未練を断ち、煩悩を焼き尽くしてくれる仏様。
2番目の仏様は釈迦如来。
忌日は二七日、対応する王は初江王。仏教を開かれたお釈迦様が悟りを得たお姿。亡き人は釈迦如来の説法により教えを残さず授かる。
3番目の仏様は文殊菩薩。
忌日は三七日、対応する王は宋帝王。「三人寄れば文殊の知恵」ということわざにもあるように、智慧を象徴し、智慧をもって人々を導いてくれる仏様。獅子に乗っている。
4番目の仏様は普賢菩薩。
忌日は四七日、対応する王は五官王。慈悲(優しさ)と智慧の実践を象徴し、慈悲をもって正しい行いを導いてくれる仏様。像に乗っている。 心の安定を修する行である禅定をつかさどる仏様。
5番目の仏様は地蔵菩薩。
忌日は五七日、対応する王は閻羅王(閻魔王)。弥勒菩薩がお出でいただくまでの間、全ての人々をお救いいただく仏様。右手に錫杖、左手に宝珠を持っている。
6番目の仏様は弥勒菩薩。
忌日は六七日、対応する王は変成王。お釈迦様が亡くなってから五十六億七千万年後の未来に現れて人々を救うとされる未来仏。背の装飾は光を表す光背。
7番目の仏様は薬師如来。
忌日は七七日、対応する王は太山王(泰山武君)。病や苦悩から人々を救う現生利益の仏様。左手に薬壺を持つ。浄土は東方浄瑠璃世界で正式名は薬師瑠璃光如来。
8番目の仏様は吉祥観音(観音菩薩)。
忌日は百カ日、対応する王は平等王。その名を唱え念ずればその声を聞いて苦難から救ってくださる。人々の願いに応じて三十三のお姿に変化して導く。
9番目の仏様は勢至菩薩。
忌日は一周忌、対応する王は都市王。観音菩薩とともに阿弥陀如来の脇侍。智慧を司る仏様で、智慧の光で全てのものを照らし、人々を迷いや苦しみから救う。
10番目の仏様は阿弥陀如来。
忌日は三回忌、対応する王は五道転輪王。西方極楽浄土の仏様。 限りない智慧と慈悲をもって生あるもの全てを救い極楽浄土へ導いてくださる。
11番目の仏様は阿閦如来(あしゅくにょらい)。
忌日は七回忌、対応する王は蓮上王。大円鏡智(鏡のように全てを映し出す智慧)の徳を備え、物事に動じず迷いに打ち勝つ強い心を授ける仏様。
12番目の仏様は大日如来。
忌日は十三回忌、対応する王は抜苦王。大日とは大いなる日輪(太陽)を意味し宇宙そのものを現す。全ての仏様の根源とされる。 宝冠をかぶっている。
12番目の大日如来をお参りすると、檜原城址の看板のある平な場所に出ますが、十三仏巡りはまだ続きます。
13番目の仏様の前に延命地蔵、そして13番目の仏様の裏側に愛宕地蔵が安置されています。
この土地で信仰されている仏様ですので、しっかりお参りすると良いと思います。
13番目の仏様は虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)。
忌日は三十三回忌、対応する王は慈恩王。虚空が広大で全てのものを包み込むように、無量の智慧と慈悲をもって人々の願いを満たし救う仏様。
そして、来た道を戻って城山を降りたら、最初にご紹介した観音堂(普門観)へお参りです。
降りるときは、十三仏巡りの道ではなく「吉祥寺方面」と書かれた道標の通りに進むとはやく降りることができます。
吉祥寺では十三仏の御朱印もあり、13回のお参りで満願となります。
また、檜原城址を訪れた記念に、寺務所で登城印をいただくこともできます。
知れば知るほど奥が深い十三仏。
吉祥寺は、檜原村に来る方はどなたも通るであろう南北秋川の分かれ道、橘橋交差点のすぐそばです。
「三頭山を登るほどの時間はないけど山を歩きたい」ときにもおすすめです。