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五感を癒す村の四季の味『NPOのお店 四季の里』

ライター:淺倉拓馬(TreenessLife089)

檜原村役場から北秋川沿いに車を走らせて間もなく、「払沢の滝入口」バス停から滝に向かって徒歩2分の所に、古民家風の建物がある。NPO法人フジの森が運営するレストラン「四季の里」だ。

多摩産材のモデルルームも兼ねた「四季の里」では、檜原村産の旬の野菜を使った料理が楽しめる。「ひのはら彩り御膳」はヘルシーなのにボリューム満点の看板メニューだ。土曜日、日曜日には「野菜カレー定食」や「天ぷらうどん定食」も楽しむことができる。いずれも村の綺麗な空気とお水、山村の大地で育った野菜の美味しさが自慢だ。食堂の隣にはエコツーリズムインフォメーションセンターも併設されており、村の観光案内をしてくれる。

佐藤直さん(写真右側)はホール担当、熊野直紀さん(写真左側)はキッチン担当を務めているほか、土日にはお二人とも自然体験や環境教育のイベントや観光ガイドをしている。

NPOフジの森との出会い

平成2年に檜原村で自然と人や都市を繋ぐ環境プロジェクトを立ち上げたフジの森で、約13年間活動している佐藤さん。フジの森の法人化直後に、縁あって檜原村に来ることとなった。兵庫県出身である佐藤さんは大学院生の時に、日本の国鳥であるコウノトリの研究や野生復帰をさせる活動に興味があった。しかし、さまざまな事情が重なり、研究者としての道を歩むことができなかった。人の繋がりに導かれて檜原村に来てからは、檜原村の自然に身を任せるようになった。フジの森で働くことの魅力は、

「自然の中に身を置いて四季の移ろいを感じることが出来ること。イベント後に焚き火を囲んでお茶をしたり、夏には木陰でコーヒーを飲んだりと仕事中にリフレッシュできる、気持ちの良い環境」

と顔をほころばせた。

熊野さんは、フジの森で7年ほど活動しているという。北海道で人に勧められて檜原村へ観光にきたのをきっかけに、檜原村でエコツーリズムプロジェクトが立ち上がることを知り、携わりたいと思ったそうだ。市民の経験しかない熊野さんは「村民になる日が来るとは思っていなかった」というが、今では檜原村での生活にすっかり馴染んでいる。村に住むようになり、山菜や野生のきのこ、綺麗な空気と水で育った採れたての野菜など、市場に出回っていないものが食べられることで「毎日が特別」と感じているという。

熊野さん「観光地にはよくあることですが、檜原村も雨の日は人が来ない。だけど、僕にとっては雨あがりの檜原が一番魅力的。うっすらと見える青空に立ち昇っていく霧に包まれた村が、絵画や映画のワンシーンに迷い込んだようなんです」

佐藤さん「檜原村は滝や沢が魅力的だと言われますが雨も水であり、みんな同じで魅力的。僕は雨が降っている時が好きで、苔の生えた屋根から落ちる水滴の音が不定期に音を奏でるのが好きです」

と二人にとっての檜原村の自然の魅力をシェアしてくださった。

根っこの成長と心の移ろい

佐藤さんが大学院の時に抱いていた将来のビジョンと現状は全く違うが、フジの森での活動を通して、人に自然との触れ合い方を共有することは楽しみとなっている。

「生物は覚えなくても面白いと思う。多くの人がよく植物の名前を覚えたりするけど、そこにある植物を見れば、たとえ名前を知らなくても楽しめる。自然を見てそのまま楽しめば良いのに、どうしてもみんな知識があるから、表面的な話しをしてしまいますよね」

名前を知ることが大切なのではなく、その植物の本質を知ることが大切だと佐藤さんは感じている。

いっぽうの熊野さん。国内外のさまざまな環境やコミュニティーでの生活を経験してきた熊野さんにとって、檜原村は自分らしさを認識する大事な環境となったのかもしれない。

檜原村の下川乗集落で郷土芸能の獅子舞に参加させてもらっているのですが、変な言い方ですが、初めて日本の時間軸に組み込まれた気がしたんですよね。檜原には江戸の開幕前から続いている神事や芸能が沢山あり、そのような綿々と受け継がれている行事に参加することは日本人として歴史に組み込まれた気がしたんです。私は団地育ちで郷土の伝統芸能なんてものは身近になかったので。」

熊野さんにとって自分が歴史を繋いでいる存在であると実感した瞬間だった。

また、フジの森の山仕事の日には、いつもこの四季の里でご飯を食べていたという。当時は村のお母さん方がお店を切り盛りしていて、そのときの姿が今も熊野さんの心に炎を灯してくれているとのこと。村のためにとそれぞれがやってきたことが、心と心を繋いだのだ。熊野さんはその人たちに代わって、今、四季の里の味を引き継いでいる。

将来は個性豊かで魅力の詰まった雑木林

檜原村のエコツアーを盛り上げていきたい、と熊野さんは話す。「今後も『東京ひのはらんど』(檜原村のエコツアー)のガイドが増え続けてほしいですね。雑木林のように、多様なガイドがいる村になってほしい。個々でそれぞれに抱く檜原村の魅力をシェアしていくことで、膨大な村の魅力が村内外の人々に伝わっていくはずです」

エコツアーへの思いは佐藤さんも同じだ。四季の里は払沢の滝の入口でもあり、檜原村の観光の入口でもある。そんな場所を活かして村の様々な情報を発信し、外部だけでなく村民にも情報を得てほしい、と佐藤さんは願っている。

「村の人たちが野菜を届けに来たり、集まる場所であり、村民と村外の人々が繋がる場所にしたいですね。ふらっと訪れて村のことを知ってもらい、さらに村の深い部分に触れてもらえるような場所にしていきたい。」

二人が好きな檜原村に降る雨は、山々の水系と化し、やがて一つになる。それぞれの個性も同じベクトルに向いた時に、心と心が繋がって一つになるのだろう。

旬の野菜料理と、檜原村への熱い思い。季節の移ろいとともに五感で楽しみたい場所『四季の里』。

【インスタグラム】 https://www.instagram.com/hinohara_shikinosato/

取材・文/淺倉拓馬(TreenessLife089)

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