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湧いてくるおもてなしと溢れる感動の地「清水苑キャンプ場」

ライター:淺倉拓馬(TreenessLife089)

お勝手口にはお客さんからの置き手紙、それからちょっとしたおやつまで置いてある。玄関先には里芋の皮など季節の野菜が天日干しされていたりする。武蔵五日市駅から秋川沿いに車を走らせ15分、「山の店」や「中山の滝」を越えて「鬼切」バス停の手前にある築300年以上経つ立派なお家。ただ、通る人はここがキャンプ場だと思うのだろうか。「清水苑」と書かれたのれんが目立つ。

実はここ「清水苑キャンプ場」は檜原村のキャンプ場の走りであった。清水苑を経営している野口美代子さんは顧客からも地元民からも愛される村の看板キャンプ場を担っている。

清水苑は夢とロマンの詰まったアルバム

「私はねぇ、こっち(檜原村)に来てから浮いたのよ」と、栃木県で生まれ、多感な大学生時代を東京で過ごした美代子さんは檜原村に来てから自身の人生が好転したと話された。そして亡き夫との出会いが今の美代子さんを創っていったという。

うどん打ちが好きな義父が車庫で売店をしていた時があり、川で遊んでいる子ども達に、よく食べさせていたそうだ。それを見ていた美代子さんは「義父は商売が好きなんだなぁ」と思っていた。檜原村に来てからは休む間もなく働いた。牛乳配達や新聞配達、色んな物まで村中に配って回った。今では美代子さんを知らない人なんていない。

後に魚屋を始め、それも村中に広まった。当時、村内にはほかに魚屋がなかったため、毎日のように鯛を焼き、イベント事にはお造りを注文されるほど人気があった。その頃から何かとパイオニアだったわけだが、キャンプ場開設も村の誰よりも早かった。

キャンプ場はオープン当初からテント一張り2,000円と、未だに値段を変えていない。キャンプ場の名前の由来を聞いてみると、「清水が湧き出ているから清水苑なのよ」と美代子さん。檜原村の自然の恵みをイメージさせ、キャンプやバーベキューがしたくなる様な清涼感を漂わせるネーミングだ。

秋になると渓流の水量が少なくなり、流れてきた廃木がキャンプ場の下の河原に溜まる。夫とそれらを使って屋根付きのBBQスペースや流し台、椅子やテーブル等を作ったりした。オフシーズンにはキャンプ場改修工事が行われ、キャンプ場開始の年から毎年訪れるお客さんは年々の変化にも驚くという。

そんなキャンプ場も、元は畑であり、後に数年ほど放置され荒れた土地と化したところを、夫と一緒に楽しく整備した。こうして、長い年月をかけて古き良き思い出が積み重なっていった。

美代子さんとご主人の夢とロマンが詰まった清水苑で一時を過ごす顧客が、またあの時の楽しい思い出や感動をアルバムを見返すように再び訪れる。

今日はうどん・蕎麦打ちの先生

檜原村観光協会がある地域交流センターの2階では「森の学校」という体験教室をやっていて、そこで美代子さんはうどん・蕎麦打ち体験や蒟蒻(こんにゃく)づくりの講師を務めている。

「体験教室はコロナ禍前までは学生から大人までたくさん来たねぇ。当時は講師5人で蕎麦打ち教えてたねぇ」と、美代子さんは大勢で賑わうことが大好きだから残念そうだ。

現在は休止中であるが、みそやたくあん漬、わさび漬の体験コースもある。こうして、美代子さんはキャンプ場経営だけでなく、伝統と文化の継承も担っている。

一杯のお茶は万倍の喜び

いつかのクリスマス・イブに夫と出会い檜原村に来て、牛乳配達や新聞配達して、苦労することも多かったが、それが今のおもてなしに繋がっている。毎日配達で村中を回っていると色んな人に出会った。お茶たくさん飲んでけー、あれ持ってけー、これ持ってけーと美代子さんの心に触れる事がたくさんあった。だから今の自分はお客さんに優しくして、喜んでもらうのがとても嬉しいという。「キャンプ場が営業日でも休日でも、いつも誰かと会話していたよぉ」と接客の気持ちを途切らせなかった。

「私はキャンプ帰りのお客さんに『お茶一杯飲んでいきなよー』って言うんだよね。」

「気持ちが和むんじゃないかなぁと思って・・・」

「やっぱりそういう気持ちが無いと商売は難しいよねぇ。」と美代子さんは話す。

お客として来る子ども達に美代子さんの事を聞く機会があり、

「おばちゃんが自分で育てた野菜を料理して食べさせてくれるんだよ!」

「僕達のためにブランコを作ってくれたんだ!」

「色んな事教えてくれる!」などと話してくれた。

日頃からお客さん関係なく相手の気持ちになって言動をとる。そんな素直で純粋な美代子さんの心が年齢問わずして人々の心の琴線に触れる。

今は亡きご主人と、当時抱いていた夢を叶え、そして今日も誰かにお茶一杯。清水苑の一杯のお茶からは万倍の満面の笑みが、毎日溢れている。

 

清水苑キャンプ場

 

取材・文/淺倉拓馬(TreenessLife089)

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