うどん好き・飲み好き人間好きの憩いの場「手打ちうどんはたの」

檜原村の南に進んで少しすると広がる空とともに現れるうどん屋さん。

休日になると日中は観光客が列をつくるお食事処「手打ちうどんはたの」。愛情たっぷり、コシのあるうどんに、出汁のきいた味が後を引く。駐車場が広くて立ち寄り易い。南秋川が見え、上を見上げると空を形どる山間と木々が雄大だ。そんな大自然に囲まれたお食事処は昼間と夜間でその姿を一変する。

手打ちうどんは嫁さんの強み

21歳の時に、母親が創業した「幡野食堂」を継ぐことになった店主、幡野昭和（あきかず）さん。24歳から10年間ほど幡野食堂の横で焼き鳥屋「焼き鳥はたの」を同時に営業していた。夜間の営業は「焼き鳥はたの」という飲み屋として。

34歳から「手打ちうどんはたの」でリスタートし、28年の月日が経つ。建物も一から全部建て直した。

そんな昭和さんを支え、顧客に親しまれる奥様、加代子さん。飛脚のように客から客へと気配りを。

檜原村は旅館や民宿も含め、蕎麦を出すところが多い。昭和さんのお母さんが、手打ちうどんを主軸とした「幡野食堂」を始めたきっかけはというと、

加代子さん（以下、加）「『うどんくらい打てないと嫁に行けないよ』という話で…」

昭和さん（以下、昭）「だから、ばぁちゃん自己流だよね！」

檜原に嫁いでくる者はうどんくらい打てて当たり前という時代の人である昭和さんの母親は、それを強みとし一切の業を成した。

昭和さんが手打ちうどんを引き継いで40年以上、母親の技術の高さを今でも感じるそう。

昭和「あっちが薄くなったら薄い方に合わせて、どんどん平麺の様になっていく時もあるしね…」

こねたうどんを均等な厚みに伸ばすのは容易ではない。ただ、手打ちうどんの良い所は、2、3日保存が可能であるという事と、防腐剤や保存料などを使用しなくて良い事だ。昭和さんは一度に15人前のうどんを打つことが出来る。

人気のメニューは？

うどんときたら皆好みは別れるだろうが、ここではカレー南蛮が特に人気。もともと地元の顧客から人気があったそうだ。

加代子「幡野に行ったらカレー南蛮みたいな…」

昭和「でもカレー南蛮は自分で食ってても美味いと思うよ」

多くのお店に並ぶカレー南蛮は甘口のものが多いようだが、「手打ちうどんはたの」のカレー南蛮は出汁がよくきいた少し辛口。

カレー南蛮以外にもコシのある麺はどの味や具材とも相性抜群だ。開花丼や定食など季節の移ろいとともに食欲をそそられる。

手打ちうどんという看板を担いでからも、カレー南蛮は相変わらず人気ではあるが、「焼き鳥はたの」は今でも健在している。当時、昭和さんが焼き鳥屋を始めた時は、1日に1000本以上売り上げるお店から素材を仕入れたり、焼き方を学んだりした。本物を見て、食べて、感じてきた昭和さんの焼き鳥は裏の看板メニューだ。

こだわりは夜間の営業

観光客が多い休日の昼間は特に汗が滲むほど忙しい。お店の外にお客さんの列ができることだって珍しくないが、昼も夜も加代子さんと2人でお店を回す。そのため、ランチ後の休憩は必須だし、夜の仕込みをする必要がある。実は昼間はそんなに忙しくなって欲しくないというのが本音。

夕暮れ時になると、柏木野地区の入口に「手打ちうどんはたの」の明かりが灯る。続々と地元のなじみの顔が増え、笑顔と笑い声が絶えなくなる。

昼は汗とうどんのつゆが、夜は満面の笑みと笑い声が店中にほとばしる。

「お店に集まる常連さんは、人間が好きで店にくる。コミュニケーションが大事なんです。やっぱり村で一軒くらいこういうのやってないとねぇ。」と、昭和さん。村内の交流を大切にしている。これが店主昭和さんのこだわりの時間であり、「手打ちうどんはたの」の真の姿でもある。

「やっぱり飲むのが好きなんだよね！」

今よりもずっと若かった頃、お気に入りの飲み屋に通い、居酒屋で働くこともあった。

自分が客の時と、お客さんをもてなしている時を経験しているからこそ、今この時間が存在している。20代、30代の頃は17:00から開店し、翌日2:00まで営業していたこともあった。

今は22時閉店ではあるが、時間ぴったりに灯りが消えることはない。のれんは22時に下げても。「楽しく話をしているお客さんの気持ちを大切にしないとね」という心遣い。過去に客として飲み屋に通っていた時の経験が生きている。

そんな飲み好きの夢を実現することが出来たのも、周りが支えてきてくれたからだ。「どんな人でも、一生懸命に何でも打ち込んで、真面目に取り組んでいれば絶対応援してくれると思う。」昭和さんはお客さんとのコミュニケーションを通じて、誰かの支えになりたいと思っている。

多忙な日々に溢れる笑顔、心に染みる昔ながらの味は全て本物。そんな店主、昭和さんが打つうどんや焼き鳥は特別だ。

さぁて、電話が鳴り始めたぞー。

「馬鹿言って、飲んで、笑って！」

今夜も憩いの場の提供よろしくお願いします！

 

手打ちうどん　はたの
定休日　月曜日
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