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まるで森林浴。檜原森のおもちゃ美術館へ行こう。

ライター:檜原村地域おこし協力隊 (土井智子)

面積の93%が森林という檜原村。その村の北側、小沢地区に2021年11月3日、「檜原森のおもちゃ美術館」がオープンした。おもちゃ美術館と聞いて、東京四谷にある「東京おもちゃ美術館」が頭に浮かんだ人もいるかもしれない。檜原森のおもちゃ美術館はその姉妹美術館であり、全国で8番目となる。
檜原森のおもちゃ美術館のおどろくべきところは、建物のほとんどに地場産材である檜原村の木材を使用しているということ。全国でもめずらしく、しかもそれが東京都で実現していることに驚かれるという。檜原森のおもちゃ美術館は文字通り、森の中にある、木をふんだんに使ったおもちゃ美術館なのだ。
そのおもちゃ美術館が建てられた場所は、かつて地域の子供達が通った旧北檜原小学校跡地。校舎は、1984年の廃校後から2017年まで活用されていたが、老朽化に伴い令和元年11月に取り壊しとなった。地域の人達の思い出が詰まった小学校は、今度は村内外からたくさんの子どもや家族が訪れる場所となった。

運営をするのは、地元の卒業生が中心となってつくられた特定非営利活動法人 東京さとやま木香會。新しく生まれ変わったその場所に、違う形でまた、日々通うことになったのは、小沢地区に住む大谷貴志さん。檜原森のおもちゃ美術館の館長である。

思い出のグラウンド、窓からの景色はそのまま

取材の日も、親子連れや、孫連れ、学生や夫婦が沢山いて、みんなそれぞれ楽しんでいる。靴を脱いで入った瞬間に感じる、木のぬくもりと、檜の香りは、何度訪れても癒される場所だ。木でつくられたおもちゃや遊具は、子どもはもちろん、大人も童心にかえることができるものばかり。

土井(以下、土)「館長はここにあった小学校の卒業生だと聞きました。毎日、通学して、放課後も遊んでいた場所にまた今、通っているというのはどんな感じなんでしょう?」

大谷(以下、大)「なんだか不思議な気分ですね。今までは通勤に2時間かかっていたのが、今は徒歩1分の通いなれた場所(笑)。当時とは建物は変わりましたけど、建物から眺める景色は昔と変わらないんですよね。あの頃校舎から見ていたグラウンドも、山の景色も、今もそのままです。」

土「この小学校の卒業生も、おもちゃ美術館を訪れているんじゃないですか?」

大「そうですね、卒業生で今は村外に暮らす人も来てくれましたね。ここはみんなの思い出の場所だから、この建物ができると聞いたとき、旧北檜原小学校だったという思い出の品を残してほしいというのは、お願いしましたね。今こうして、音楽室にあった五線譜の黒板や学校のシンボルツリーだった銀杏の木が、形を変えてまたこの建物に戻ってきました。」

土「この小学校を卒業した人には、懐かしい思い出がよみがえりますね。」

自分の母校がおもちゃ美術館に生まれ変わることを知り、地域を盛り上げたいという地元の有志で、特定非営利活動法人 東京さとやま木香會を立ち上げた。大谷館長はそれまで務めていた東京都の職員を早期退職し、おもちゃ美術館の館長に就任された。長年勤めた職員を早期退職するというのは、相当勇気がいる決断だったのではないかと思い、聞いてみた。

大「確かに、周りの人から止められたりもしましたね。でも妻が快く私の背中を押してくれたんですよね。それが本当に有り難かった。」

土「すごい奥様ですよね。気持ちをわかってはいても、家族のことや生活を考えるとなかなかできることではないです。そんな素敵な奥様と、今、一緒に働いているなんて良いですね。」

大谷館長を後押しした奥様は、館内2階にあるミュージアムカフェ「さとやま食堂」の店長を務めている。檜原村の素材を活かした檜原の定番メニューが食べられるとあって、週末ともなると沢山の笑顔でにぎわう店内。

地元で働くことができる場所をつくる

土「館長は地元のために何かしたいとの思いで、この美術館の館長になられたわけですよね。」

大「そうですね。これが正解かはわからないけど、とくかく地元の人間がやらなければという思いだったんです。それでも、私はいつまでも館長をやるつもりはないですから。」

土「そうなんですか?次なる目標があるんですね?」

大「次世代の館長を育てて、その人に館長になってもらうこと。それをさらにまた次世代に繋ぐことが今の目標ですね。」

土「そういうことでしたか!」

大「地元の人間が地元で働くという、この当たり前のことができるようになるのが本当に大事なんだと思っているんです。村で働くとなると、林業か、役所か、お店と限られてしまう。それ以外の仕事があるということ、そういう仕事をつくりたいという思いで、まずはやってみようっていうことになったんです。だからこれがスタートなんです。」

檜原森のおもちゃ美術館はスタッフやおもちゃ学芸員が、笑顔で出迎えてくれる。「私が何もできないけどスタッフは本当に優秀で、助けてもらっています」と館長。日々、村や地域の人、スタッフ、そしてボランティアのおもちゃ学芸員に支えられて、おもちゃ美術館は成り立っているという。「みんなが頑張りすぎないように、楽しく、リラックスできるようにするのが私の仕事です」と笑顔の大谷館長。その館長が放つ雰囲気が周りを明るくしているんだと感じる。居心地が良いのは檜の木のぬくもりだけでないことがわかった。檜原森のおもちゃ美術館で是非、体感してみてください。

檜原森のおもちゃ美術館 公式HP
https://www.hinohara-toymuseum.com/

ライター:檜原村地域おこし協力隊・土井智子 2019年に千葉より檜原村に夫婦で移住し、地域おこし協力隊として村内で活動している。 自然豊かな檜原村で古民家暮らしを満喫し、日々の暮らしを発信中。 https://www.instagram.com/tocoxxhinohara/

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