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デザインで村の懸け橋をする杜氏。檜原村の新しいランドマークを訪ねる。

ライター:檜原村地域おこし協力隊(土井智子)

檜原村特産のじゃがいもを焼酎にする、その工場を村内につくりたいと、村長の構想から実に20年経った2021年7月27日、檜原村の北側にある小沢地区に、じゃがいも焼酎工場が完成しオープンした。村で採れたじゃがいもで、村の人が造るじゃがいも焼酎はまさに「メイドインヒノハラ」。そしてこの工場は焼酎の生産工程を見学ができ、製品を買うことができるだけでなく、地元の農産物やお土産品、檜原村の木を使った製品の販売、軽食の提供も行う、道の駅のような村の新しい観光スポット。じゃがいも焼酎だけでなく様々なものをつくる場所として、ものづくりを支援していきたいという思いから「ひのはらファクトリー」と名付けられた。その「ひのはらファクトリー」のじゃがいも焼酎の杜氏で、檜のオイルや檜のマスクケースを製造販売する株式会社ウッドボックス・東京檜研究所の責任者でもある、吉田光世さんを訪ねた。


いつもデザインを考えている

吉田さんとは何度もお会いしているが、とにかく忙しそうで、聞けばいつも様々な仕事に取り組んでいる。ただ、不思議だったのは、忙しいはずなのに吉田さんはなぜかいつも楽しそうなのだ。

土井(以下、土)「ひのはらファクトリーのオープンおめでとうございます。お忙しい時ですが、ゆっくり休む時間はあるんですか?」

吉田さん(以下、吉)「数時間寝る時間はあります(笑)。今は寝ても覚めても、頭で常に焼酎造りのことや焼酎工場のこと、デザインのことなど色々考えています。」

土「吉田さんのご趣味ってもしかして・・一応、お聞きしますね。ご趣味は?」

吉「趣味は仕事ですね。大変なこともありますけど、やっぱり楽しい!デザインを考えている時が一番楽しいんですよね。」

土「そうですよね。そうだと思っていました(笑)。」

根っからの仕事人だからどんなに忙しくしていても、楽しそうなのだ。吉田さんは「木のそばで暮らしたい」と2019年に移住し、株式会社ウッドボックスの東京檜研究所の責任者として、デザイナーとして檜原村産の檜から様々な製品を生み出している。

もともと吉田さんは大学でグラフィックデザインを学び、卒業後から現在に至るまでずっとデザイナーとして働いてきた。人の伝えたいこと、表現したいこと、形にしたいことをデザインするのだという。

吉「デザイナーはアーティストではないんです。表現したいと思っている人がいるということが、デザイナーの仕事をする上での絶対条件なんです。」

土「伝え方をデザインする仕事なんですね。どういう時にデザインを考えたりしますか?」

吉「誰か人と話している時ですね。その人が持つ「美しさ」を見つけると、まずそれに共感するんですよね。そして、それをどうやって伝えたら良いか考えます。色、形、イメージ、コンセプトを形にしてみたり。そんなことをいつも頭の中で考えていますね。」

どんな場面でもデザイナーの視点から見ている、そんな吉田さんがデザインする焼酎とは?

村のたくさんの人の力を借りて造る

吉田さんは焼酎造りを一から学ぶため、青ヶ島へと飛んだ。じゃがいも焼酎造りは、檜のオイル抽出と「蒸留」という点が同じということで、相互に学びがあるという吉田さん。青ヶ島にならい、ひのはらファクトリーも大切な工程は、手作業で焼酎造りを行っていく。スタッフにも女性を起用。女性の感性を活かした焼酎造りに期待が高まる。

土「実際に焼酎が出来上がるまで3ヶ月以上かかると聞きました。どんな出来上がりになるんでしょう。」

吉「同じように造っても、造り手が変わるとこれまでとは違う味わいになると思います。実際は来年、出来上がってからのお楽しみですね。これを機に今まで飲んだことのない人や、女性にも飲んでもらいたいですね。」

新しい視点の、新しい造り手によるじゃがいも焼酎。長年待ち望んだじゃがいも焼酎工場、そして「ひのはらファクトリー」に村の人も期待を寄せている。

吉「オープンまでに本当に村のたくさんの人の力をお借りしているんです。こうして、チャレンジさせてもらえるという環境は本当に有難いです。」

土「今後はじゃがいも焼酎造りの他、ものづくりの場所にもしていくとか?」

吉「そうなんです。ものづくり創業支援の場所としてもやっていきます。私が村でチャレンジさせていただいたように、村で起業する人をサポートしていきたいですし、そういう人が増えたら嬉しいですね。」

ひのはらファクトリーが生み出す、メイドインヒノハラのじゃがいも焼酎、そして様々なモノづくり。杜氏・デザイナーの吉田さんが造る新生「じゃがいも焼酎」は早くて来年には味わえる。新酒蔵出し試飲会なども考えているそうで、焼酎好きとしては楽しみで仕方がない。

ひのはらファクトリー公式ホームページ
https://www.hinoharafactory.com/

 

ライター:檜原村地域おこし協力隊・土井智子 2019年に千葉より檜原村に夫婦で移住し、地域おこし協力隊として村内で活動している。 自然豊かな檜原村で古民家暮らしを満喫し、日々の暮らしを発信中。 https://www.instagram.com/tocoxxhinohara/

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