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登録有形文化財が「檜原時間」をゆっくり楽しめるカフェとして再生

ライター:土井智子

檜原村の南側、奥多摩周遊道路に繋がる道の途中にある人里地区。春は枝垂桜のバス停、秋は紅葉のライトアップで人気スポットとなっている人里地区の、ちょうど中心地にあるのが登録有形文化財 旧高橋家住宅だ。旧街道沿いに建つ兜づくりの古民家で、江戸末期に7代目が漢方医になったことから「医者殿(いしゃど)」と呼ばれ、地域の人に親しまれてきた建物。この度2年という修復工事期間を経て、2022年4月27日に開所式を迎えた。この建物は、その医者殿のあゆみを伝えるとともに、人里地区の地域の交流や観光の場所として、同年4月29日に「古民家カフェ晴ノ舎(ハレノヤ)」として再生することとなった。

医者殿(いしゃど)について

過去帳を紐解くと、高橋家はもともとは農家で養蚕などを営んでいたが、7代目の栄順氏が漢方医になったことから建物も「医者殿(いしゃど)」と呼ばれるようになった。屋根はかぶと造りで、檜原村では二重兜づくりの屋根がいくつか見られるが、それ以前の兜づくりとして変遷期にあたることから貴重な歴史的資料とされている。また現在は銅板で覆われているがその下は茅葺き屋根である。

外観だけでなく、内部も見どころが多くある。屋内に入ってすぐ、ひときわ大きな大黒柱に目が行く人も多い。大人が手を広げても手が届かないほど大きな欅の大黒柱。そして天井を見上げると太い梁。土間からの座敷に上がる立ち上がりも高く、通常の民家とは造りそのものが違うことがわかる。

また、漢方医だった栄順氏は駕籠に乗って山を越え往診をしていたとのことで、その駕籠も現存しており、実物を見られるのだからとても貴重である。

※当時のまま外に吊るして公開しているのは期間限定です。

古民家カフェとしての再生へ

檜原村ではこの歴史的建築物を公開し、医者殿の歴史を伝えるだけでなく、地域交流や観光の拠点として活用するべく整備を進めてきた。時を同じくして、そのことを知らず檜原村人里地区に移住してきた、とある檜原村地域おこし協力隊員。この檜原村の良さを沢山の人に知ってもらいたいと、任期満了後は人里で小さなカフェを開こうと考えていた。そしてその小さなカフェの夢は、この登録有形文化財という大きな、そして歴史ある場所で「古民家カフェ晴ノ舎(はれのや)」として展開することとなった。地元の人里自治会や人里もみじの里のご協力のもと、その大事なお役目をいただき、身の引き締まる思いで管理運営するのはHarenoya合同会社、元地域おこし協力隊の、私、土井智子である。

古いものと新しいものとの調和

公開活用にあたり、昔からある囲炉裏はそのままに、その部屋を人が集う場所にしたいと考え、地元人里の宮大工、福田棟梁に檜原産材で囲炉裏テーブルを製作していただいた。釘一本使わず組んで作り上げた囲炉裏テーブルは、品格と重厚感があり、歴史ある建物と見事に調和している。

また、お店の顔とも言える暖簾、これは人里の染め物作家・染め工房シゲタさんに製作していただいた。和の空間としっくりくる暖簾。華やいだ雰囲気を醸し出し、カフェにぴったりだ。

そして、私やスタッフもみんな、ハーブが好きで実際栽培していることもあり、店内には花やハーブに関するものを飾っている。料理にもハーブやスパイスを隠し味に加えて、昔からの檜原村の食べ方とは一味違った食べ方を提供している。

晴れでも雨でも「檜原時間」を楽しめる場所へ

檜原村は村の大半を占めるのが森林、その森林や豊かな自然が育む、空気、水。そこで育った山菜、野菜は本当に美味しい。四季折々に山の景色が美しく、またそこに暮らす人があたたかい。それらは私自身が移住してきて感動したことだ。
私は、この良さをもっとたくさんの人に知ってもらいたい、村のファンになってもらいたいという思いがある。その一助になればと、カフェとして檜原村の季節の食材を使った食事を提供することにした。また晴ノ舎発で檜原村、人里が大好きな村人から周辺をガイドしてもらうガイドツアーや、染め工房シゲタさんのワークショップも企画し、村人との交流のきっかけづくりにもなればと考えている。
店内ではカフェの他に檜原村のお土産や工芸品のセレクトショップとして、「MADE IN 檜原村」のものを販売している。
様々な接点から檜原村のファンになってもらえるよう楽しいことを他にも企画中だ。

「晴れでも雨でもどんな時でも訪れた人がハレやかな気持ちになれる場所」になるようにと願いを込めて名付けた晴ノ舎。どこか懐かしさを感じる檜原村は滞在するだけで心が穏やかになるような不思議な魅力を持っている。晴ノ舎を訪れた際は、ゆっくりとした「檜原時間」を楽しんでもらいたい。

古民家カフェ晴ノ舎

営業時間 10:00~17:00
(カフェは10:00~16:00ラストオーダー、ランチは11:00~15:00まで)
定休日:月、火曜日(4月~11月)
    月、火、水曜日(12月~3月)

ホームページ https://harenoya.com

 

ライター:元檜原村地域おこし協力隊・土井智子

2019年に千葉より檜原村に夫婦で移住し、地域おこし協力隊として活動した後、2022年4月より古民家カフェ晴ノ舎を運営。

https://www.instagram.com/harenoya.tokyo/

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