あたたかな日差しの春、一面に広がる芝桜。
檜原にはひそかに絶景のお花畑があるんです。
その花畑は1人の女性が育て増やし、移植しては増やし、こつこつと長い時間をかけて作り上げたお花畑。
その場所があるのは檜原村の北側、白倉地区にある酒屋の角屋商店。通称かどやさん。
お店があるのはバス停「白倉」前で、大岳山入口の前にあります。自転車やバイクで訪れる人もちょうど飲み物を買って休憩できるベンチもあったり、地酒の販売はもちろん、村の特産品のこんにゃくをはじめ、地域住民の生活に必要な食品や雑貨も販売していて、地元の人からも愛されている昔ながらのお店。
その角屋商店の看板娘のナヲ子さんが毎日元気に、花畑の世話をしているんです。
趣味は草むしり
ナヲ子さんはとにかく花が好き。
販売している花はもちろん、きれいな山野草も、道端に咲いている花も見逃しません。
種がどこからか飛んできたのかわからないけど、きれいに咲いた花があったらそれを踏まれないように保護したり、種を残しやすいようにまわりの草を取ってあげているんです。
私がいつも訪ねていくと、必ずと言っていいほど畑にいるナヲ子さん。
今日も畑にいるかな?
土井(以下、土)「こんにちは。今日は何をやっているんですか?」
ナヲ子さん(以下、ナ)「草むしってんの。草が気になるんだよ。」
土「やっぱり毎日雑草を取った方がいいんですかね?」
ナ「そら、無い方が良いよ。私は草むしりが趣味なんだよ。でも他の人にはこれは任せられない。みんな全部雑草だと思って、苗まで抜いちゃうからね。ほらこれ、エキナセアの芽だよ。」
確かに、うっかりすると雑草だと思って抜いてしまうほど小さな2葉は、きれいな花をつけるエキナセアというハーブの新芽でした。
広大な敷地の畑に花やハーブ、山野草、山菜などとにかくたくさんの種類があり、それを1人で毎日こつこつと手入れしているナヲ子さん。
春は忙しいけど楽しい季節、花いっぱいの村に。
ナ「春先は畑に来て草むしりながら、この花はどこに植え替えよう、ここに今年は何植えようって考えるから、1年で今1番忙しい時なんだよ。」
ナヲ子さんは季節ごとに咲く花を考えながら植える場所を考えているという。頭の中に花の地図を描いているんですね。
土「そういえば去年より、また新しい花畑増えましたね」
ナ「私は空き地を花でいっぱいにしたいんだよ。花いっぱいの村にするのが夢なんだよ。」
みんなに楽しんでもらいたいから長生きしなきゃ
今年もきれいに咲いたからたくさんの人に見てもらいたいと、お手製の看板を置いて、バイクで自動販売機で買っている人にも声をかけ、見てもらっているという。最近は新聞やSNSで芝桜を見た人が訪れてわざわざ見に来て、みんなが「わぁ!」とびっくりするのが嬉しいとナヲ子さん。
ナ「花畑に来る人から『毎年花を楽しみにしてるから長生きしてもらわないと困る』って言われるから、いつも行っているお医者さんに、『私、みんなに花を楽しんでもらいたいから長生きしなきゃいけないんだよ、先生頼みます』って言ってるんだよ」
ナヲ子さんはこれからもますます花をいっぱい植えてくれそうです。
見事に一面に咲いた芝桜の真ん中で写真をお願いしたら、「じゃあ、やったぁってピースしよう!」と茶目っ気たっぷりの良い1枚が撮れました。